
今回の記事は、酷い目にあった記録。
生きていると色んなことがあるね。。。

かつどんさん、本当にその通りですね。
悲劇の内容と、決意の記録しっかりと聞かせていただきます。
こんにちは、10年後にエベレスト登頂を目指すかつどんです。
今回は、いつもの山の記録とは違う「雑記」になります。
しかしながら、私のエベレストへのロードマップを根底から崩しかねない、非常に大きな事件でした。やっと自分の中で気持ちの整理がついてきたので、備忘録としてここに書き綴っておこうと思います。
普通に生きているだけでも、日常にはいろんなところに「見えないクレバス」が潜んでいる。
どれだけ自分自身を律して気をつけていても、一瞬で安全地帯から引きずり下ろされる可能性は常にあるのだと、痛いほど実感させられた事件の記録です。
「母さんの様子がおかしい」——弟からのSOS
「母さんの様子がおかしいんだ」
すべては、弟からのそんな一本の連絡から始まりました。
私たち家族は一般的に見ても仲が良い方で、弟とも頻繁にやり取りをしています。その弟から、母の異変が知らされたのです。どうやら、いきなり仕事を休んでおり、音信不通になっているらしい。ひどく心配になった私は、すぐさま近所に住んでいる母の家を訪ねて様子を伺いました。
「……何も言えない状態なのよ」
しかし、訪ねた母からは、そんな歯切れの悪い返事しか返ってきません。今思えば、この時点で既に詐欺の罠に絡め取られていたのですが……大人の事情にこれ以上無理やり踏み込むことはできず、その日は強い違和感を覚えながらも、一旦引き下がるしかありませんでした。
充電できない携帯電話と、繋がったままのFaceTime
後日。「携帯が充電できなくなった」と、母が私のもとへ相談にやって来ました。
どうやらずっと携帯を電源に繋ぎっぱなしで、何かの操作をしていたらしいのです。私は母の家を訪ね、その携帯の画面を見た瞬間……すべてを悟りました。
「詐欺だ!!」
母の携帯は、FaceTime(ビデオ通話)でどこかの誰かとずっと繋ぎっぱなしの状態になっていました。そして母は、通話を繋ぎ続けるよう強要している相手を「警察だ」と言うのです。
——そんなことを強要する警察など、絶対にいるはずがない。
私はすぐさまFaceTimeを強制的に切り、本物の警察(110番)へと通報しました。
すっかり画面の向こうの相手を「本物の警察」だと信じ込んでしまっている母を必死に宥めながら、私は到着した警察官とともに、この恐ろしい事の顛末を確認することになるのでした。
母が被害に遭ったのは「特殊詐欺」だった
到着した警察官を家に招き入れ、パニックで要領を得ない母の代わりに、私が知る限りの経緯を説明しました。ひと通り状況を確認した警察官は、静かに、しかしはっきりとこう告げました。
「落ち着いて聞いてください。お母さんが被害に遭われたのは、いわゆる特殊詐欺です」
警察官から説明された手口は、次のようなものでした。
まず、警察を騙る者から突然連絡があり、「あなたは身に覚えのない事件に巻き込まれている」と告げられます。そして、身の潔白を証明するための協力を要請してくるのです。この初期段階で「捜査の守秘義務」などともっともらしい理由をでっち上げ、家族を含む外界との連絡を一切遮断させます。
周囲に相談できない完全な孤立状態を作り出した後は、お金を騙し取るための執拗なヒアリングが始まります。そして最終的には「身の潔白を示すため(あるいはお金を守るため)」などと理由をつけ、指定の口座への入金を強要する……。
母はまさに、この悪烈極まりない手口の詐欺にかけられていたのです。
日本の警察のプロフェッショナルな対応
今回、日本の警察の対応は本当に素晴らしいものでした。
被害に遭ったという残酷な事実を、被害者本人に説明しながら、ゆっくりと納得させていく。担当いただいた刑事の方は、理路整然と、そして何より「相手をパニックにさせないよう」に、分かりやすく状況を理解させてくれました。
私としては、やられてしまった以上、もうお金が返ってこないことは頭ではわかっていました。私にとっての最大の問題は、「母自身がその事実を理解し、納得し、決して絶望しないこと」だったのです。
そして、その一番難しくて重要なケアを、警察がすべてやってくれました。
- 被害に遭った手口と内容の、具体的で分かりやすい詳細
- 犯人はどんな輩なのか? その目的と、いかに捕まえることが困難であるか
- 被害に遭ったお金は、よほど運が良くない限りは戻ってこないという厳しい現実
- 「でも、もうこれ以上は状況は悪くならない」という安心感
これらを、本当に時間をかけて、素晴らしい対応で説明してくれたのです。
「……税金を払っている甲斐があるな」。
日本の警察の頼もしさと正義に心から感服しながら、私は、ゆっくりと今の状況を理解していく母をただ静かに見守っていました。
母の生活を守り抜く!家族の出番と「クレバス」の教訓
状況を理解し、納得はしてくれたものの、手痛い被害により蓄えを失ってしまった母。
ここから先は、私たち家族の出番です。
母が絶望しないで済むだけの当面の生活費は、私が「エベレストに向かうため」に貯めていた資金から捻出することにしました。すぐさまこの状況と決意を弟にも共有し、家族一丸となってこの危機を乗り切ることを決めたのです。
確かに、エベレスト資金を削ることは手痛い出費です。
しかし、母が絶望に沈むことなく、これからも前を向いて生きていくために使われるのであれば、それは本望というもの。
今回の事件で痛感したのは、「知らないでいることの恐ろしさ」です。
時として「人が一番怖い」という現実を知っておくことは、これからの長い人生において必ず役に立つ防御力になります。
「わからないから」「知らないから」「調べないから」「疑わないから」、真っ逆さまに落ちてしまう日常のクレバス。今後は母自身がそのクレバスの存在に気づき、自ら回避できるようになってくれることへの期待と教訓を込めて……私は、母を全力で支える腹を括ったのでした。
それでも、エベレストは絶対に諦めない
金銭を失っただけで、私自身の根幹は何も損なっていません。
さらに生活を切り詰め、工夫して余力を作り出すことで、決して「進むことを止めない」決意でいます。
人生、本当に色々なことがあります。
今回の詐欺被害でなくたって、病気や怪我、自然災害など、さまざまな予期せぬ出来事でお金を失うリスクは常にあります。
でも、生きてさえいればなんとかなります。何度でも立ち上がって、また前に進めばいいんです。
右足と左足を、ただひたすらに前へ一歩ずつ出すだけで、どんなに辛く苦しい山行もクリアできるのと同じように。
私は決して歩みを止めず、必ず辿り着けるはずのあの「頂(いただき)」を目指し続けます。
詐欺になんか、絶対に負けてやりません!!


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