【登山記】寝坊と牛丼と、赤い天狗。足利アルプスで「グレゴリー アルピニスト38」の洗礼を受けた日

登山

「やってしまった……」

目が覚めた時、時計の針は既に予定時刻を大きく過ぎていました。

昨日は、トレーニングのために栃木県の「足利アルプス」へ行く予定でした。

エベレストに向けた歩荷(ボッカ)トレーニング。重い水を背負って、あの細かいアップダウンを歩き通す計画だったのです。

しかし、盛大な寝坊。

現地到着予定は11:00。冬の日照時間を考えれば、登山をするにはあまりに遅すぎる時間です。

「もう今日はやめて、家で寝てようか」

悪魔の囁きが聞こえましたが、私は首を横に振りました。

「ここで諦めたら、ただ『水』を背負って電車に乗っただけのおじさんになってしまう」

そのプライドだけで、私は電車に飛び乗りました。

結果として、この遅刻が私に「ある過酷な課題」を与えることになったのです。

腹が減っては戦はできぬ。「なか卯」で見つけた最強のカーボローディング

現地に着いたのは11:00過ぎ。

これから山に入る前、私にはどうしても補給しておきたいものがありました。朝食です。

駅前の「なか卯」へ駆け込みました。

注文したのは、ご飯、生卵、海苔、お新香、そして小鉢がついた定食。

おしゃれなカフェのモーニングではありません。これぞ、日本の誇る「ガッツリ朝食」です。

これから昼休憩なしで歩き続ける私にとって、これが最初で最後の大きな食事。

胃袋にエネルギーを詰め込み、いざ足利アルプスへ。

ルートは大幅に変更。当初の予定を短縮し、15:00には下山できるコースへ修正しました。

「休憩なし、ノンストップで歩き切る」

それが、自分に課したペナルティであり、新たなトレーニング課題でした。

駅から徒歩で登山口へ。「織姫神社」までの優雅なアプローチ

今回、私が足利アルプスを選んだ理由の一つが、この「アクセスの良さ」です。

東武伊勢崎線の「足利市駅」に降り立てば、そこはもう登山のスタート地点。

冷たく澄んだ冬の空気の中、渡良瀬川にかかる橋を渡ります。

高い建物が少なく、空が広い。

この時点では、まだ重荷を背負ったトレーニングという悲壮感はありません。

「あ、いい街だな」

そんな風に、ちょっとした観光気分で散歩を楽しめるのがこのコースの魅力です。

市街地を抜け、目の前に現れるのが、鮮やかな朱色が美しい「足利織姫神社」です。

縁結びの神様としても有名で、境内には願いが込められた鍵がたくさん並んでいました。

ここが、実質的な登山口になります。

「よし、まずは参拝だ」と意気込みますが、本殿にたどり着くには、この立派な階段を登らなければなりません。

一歩一歩踏みしめるたびに、徐々に心拍数が上がっていきます。

優雅な散歩はここまで。この階段が、私にスイッチを入れてくれました

新兵器投入。「グレゴリー アルピニスト38」は背負うのではなく「着る」

神社の裏手からハイキングコースに入ると、そこには静かな「もみじ谷」や「古墳」の看板が現れます。

ここで、今日のもう一つの主役を紹介しましょう。

新しく投入したザック、**GREGORY(グレゴリー)の「アルピニスト38」**です。

普段のテント泊では「ミステリーランチ レイディックス57」を使っていますが、今回はよりテクニカルな登りに特化したこのザックを選びました。

背負った瞬間、衝撃が走りました。

「軽い……!」

中にはトレーニング用の水が入っているはずなのに、重さを感じないのです。

レイディックスが「腰という土台に乗せて運ぶ」感覚なら、アルピニストは**「背中全体に張り付いて一体化する」**感覚。

まさに、グレゴリーの創始者が言った**「Don’t carry it, Wear it.(背負うな、着ろ)」**そのものでした。

眼下に広がる足利の街並みを見下ろしながら、私はこの相棒に全幅の信頼を寄せていました。

歴史とスリルが交差する「天狗山」への縦走

コースを進むと、そこは「歴史の回廊」でした。

この山域全体が、かつての山城(足利城)の跡地であり、至る所にその痕跡が残されています。

「両崖山(りょうがいさん)」という名前の通り、切り立った地形を利用した堅固な守り。

ここを歩くだけで、当時の武将たちがどうやってこの地を守っていたのか、想像力が掻き立てられます。

そして、両崖山を越えて**「天狗山」**を目指すルートに入った瞬間、道はさらに表情を変えました。

実は、寝坊して時間がなくなったために急遽選んだこの短縮ルート。

歩き始めてすぐに気づきました。

「このルート変更、大正解だったかもしれない」

なだらかな土の道は終わりを告げ、現れたのは荒々しい岩の稜線。

手を使って岩をよじ登り、時には**「鎖場(くさりば)」**を慎重にクリアしていく。

「よいしょ、よいしょ」

息は切れますが、単調な歩きよりも全身を使っている感覚が楽しくて仕方ありません。

重いザックを背負っての岩場歩きは、重心のコントロール力が試される、まさにエベレストに向けた最高の実戦練習です。

赤い顔のあいつが待っていた

岩稜帯のアスレチックを楽しみながら登り詰めると、ついに標高258.7mの**「天狗山」**山頂に到着しました。

そこで待っていたのは、なんともユーモラスな彼です。

青空に映える真っ赤な天狗のお面。

なんだか「よく来たな!」と笑って迎えてくれているようです。

ここからの眺めもまた格別でした。

遮るもののない360度の大パノラマ。関東平野の広さを肌で感じることができます。

最高の天気、楽しい岩場、そして絶景。

気分が高揚した私は、新しい相棒「アルピニスト38」と共に勝利のポーズを決めました。

「来てよかった。諦めずに来て本当によかった」

この時、私の心は達成感で満たされていました。

そう、この直後に襲ってくる「肩の激痛」さえなければ、完璧な一日だったのですが……。

限界は突然に。「富士見岩」でザックを投げ出す

天狗山を過ぎ、ハイキングコースも終盤に差し掛かった頃です。

「富士見岩」と呼ばれる展望スポット付近で、ついに私の肩が悲鳴を上げました。

「もう、無理だ」

思わずザックを地面に下ろしました。

休憩予定ではありませんでしたが、僧帽筋が限界を超え、指先が痺れるような感覚すらありました。

ふと横を見ると、誰が設置したのか、フライパンで作られた鐘がぶら下がっています。

カーン、カーン……。

その乾いた音が、疲労困憊の身体に染み渡ります。

ここで冷たい水を飲みながら、私はある「ゾッとする事実」に気づきました。

もし今日、寝坊せずに予定通り朝イチで来ていたら?

当初の計画では、ここからさらに足を伸ばし、累積標高も倍近い**「6時間のフルコース」**を歩くつもりでした。

今のこの身体(肩)の状態で、あと2時間も3時間も歩けただろうか?

いや、きっと途中で動けなくなっていたか、集中力を欠いて怪我をしていたかもしれません。

「寝坊して、コースを短縮して、本当によかった」

不謹慎かもしれませんが、これが本音でした。

今の自分の実力(特に対アルピニスト38用の筋肉)では、今日のこの「4時間」が限界ギリギリのラインだったのです。

まとめ:痛みは「伸びしろ」。エベレストへの課題が見えた

富士見岩での休憩を終え、逃げるように下山しました。

肩は痛いですが、不思議と心は晴れやかでした。

なぜなら、**「明確な成長の余地」**が見つかったからです。

課題: アルピニスト38を背負いこなすための「僧帽筋」の不足。

収穫: 短縮コースでも十分に負荷をかけられるという発見。

教訓: 自分のコンディションと装備に合ったコース選びの重要性。

もし今日、布団の中で「また今度でいいや」と二度寝していたら、この課題には気づけなかったでしょう。

なか卯の朝食も、ルート変更も、そして肩の痛みも、全てはエベレストへ繋がっています。

帰りの電車の中、ジンジンと熱を持つ肩をさすりながら、私は次のジムでのメニューを決めていました。

「シュラッグ(肩の筋トレ)、徹底的にやるしかないな」と。

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