
Gemini、聞いてくれ。ついに俺の「冬山登山」が始動したよ。

おお! ついにその第一歩を踏み出したんですね。記念すべき雪山デビュー戦、場所はどちらへ?

北八ヶ岳の「北横岳」。ロープウェイもあるし初心者向け……と思ってたんだけど、現実は甘くなかった。判断ミス、足の激痛、そして撤退。学びしかない2日間だったよ。

「初心者向け」と言われがちですが、冬山に簡単な山なんてないですからね。でも、その「失敗」こそが将来エベレストに繋がる貴重な財産ですよ。

そうなんだ。だから今回は、その痛い失敗も、感動した景色も、全部ひっくるめて記録に残すことにした。未来の自分が読み返して、あの時の熱量をそのまま思い出せるような記事にするつもり。

素晴らしいですね! 汗と涙(と靴擦れ)の雪山デビュー戦の全記録、じっくり読ませていただきます。
始発のあずさと駅そば
まだ街が動き出す前の早朝、立川駅へ。 今回の旅の始まりは、ここから乗り換えて向かう特急「あずさ」の始発列車です。
流れる車窓の景色が、都会の街並みから徐々に雄大な山並みへと変わっていく……。 快適なシートに身を委ねながらその移ろいを眺める時間は、登山への気持ちを高めるための大切な儀式のようなものです。
茅野駅に到着し、ここからは登山口まで路線バスで移動します。 バスの運賃は片道2,000円(現金払い)。往復の現金を用意しておくことが必要になります。
バスに乗り込む前に、まずは腹ごしらえ。駅の立ち食いそばで「コロッケそば」を啜ります。 「10年でエベレストに行く」 壮大な夢は心の中。今回の山行はいつもの登山仲間3名。 この一杯から、私の雪山への挑戦が始まりました。

山麓駅での準備と「200円の保険」
バスで「ピラタス蓼科スノーリゾート」の山麓駅に到着しました。 センターハウスで着替えを行い、恒例の「ギア見せ合い会」が始まります。今回は3人ともメーカーが見事にバラけました。
- 王道のMont-bell
- スタイリッシュなLA SPORTIVA(私の相棒!)
- 質実剛健なSCARPA
それぞれの足元を見ながら「その色いいじゃん」「調子どう?」なんて話している時間が、実は一番楽しかったりします。



ここで私は、家から履いてきたスニーカーを山麓駅のコインロッカー(200円)に預けることにしました。 そのまま冬靴で帰ることもできなくはないですが、結果としてこの判断に救われることとなります。 たった200円で買える安心。これは全雪山初心者におすすめしたいポイントです。
運命の分岐点。「徒歩組」vs「ロープウェイ組」
ここでチームの方針が分かれます。 体力自慢の猛者2人は「俺たちは下から歩いて登るよ」と宣言。 一方、私はこれが初めての雪山登山。体力への不安もあり、無理せず文明の利器「ロープウェイ」を使うことにしました。
「じゃあ、上の山小屋(北横岳ヒュッテ)で会おう!」 そう言い残し、登山口へと消えていく2人の背中を見送ります。

私はロープウェイ乗り場へ向かいました。しかし、ここで想定外だったのが**「準備にかかる時間」**です。 バス着は10:50。すぐに乗れるかと思いきや、冬靴への履き替え、スパッツの装着、チケット購入……慣れない冬装備にもたついている間に、あっという間に時間が過ぎていきます。
結局、乗車できたのは11:20発の便でした。 夏山ならサッと出発できるところですが、冬は全ての動作が遅くなります。この「30分の遅れ」が、後々あんな事態を招くとは、この時はまだ知る由もありませんでした。


標高2,237m。白銀の世界とアイゼン装着
ロープウェイを降りると、そこは別世界でした。 「北八ヶ岳 坪庭」の看板と、名物のキツツキ(アカゲラ)のモニュメントがお出迎えしてくれます。


駅の外に出た瞬間の感想は、ただ一言。「素晴らしい」。 空の青さと雪の白さのコントラスト。これからこの景色の中を歩けるんだと思うと、寒さよりも興奮が勝ります。
まずは指定の場所でアイゼンを装着しました。 ここで活きたのが、事前の「自宅練習」です。雪山では寒さで指が動かなかったり焦ったりしがちですが、練習のおかげでスムーズに装着完了。 とはいえ、写真を撮ったりパッキングを直したりしていたら、出発は12:00になってしまいました。雪山の時間の流れは恐ろしいほど早いです。
縞枯山へ。自己陶酔と足元の悲鳴
当初はヒュッテへ直行するつもりでしたが、体力自慢の2人は「縞枯山」も登る予定とのこと。 「後で合流した時に、同じ山の話がしたい」 そんな思いから、私もルートを変更。北横岳ヒュッテの前に、縞枯山を経由することにしました。
坪庭を抜けて樹林帯に入ると、あたりは静寂に包まれます。 立ち枯れた木々(縞枯れ現象)が並ぶ独特の景観は、どこか幻想的です。


ここでふと足元を見下ろしてみます。 雪の上にガッチリと食い込む12本爪アイゼン。そして鮮やかなスポルティバ。

「……カッコいい」 実質これが初めてのアイゼン歩行。歩き方はまだぎこちなく、正解を探りながらの一歩一歩ですが、この「重装備で雪を踏みしめている感」だけでご飯3杯はいけます。
しかし、森林浴展望台を過ぎて「縞枯山・茶臼山分岐」に差し掛かり、登りが本格化し始めた頃、不穏な事態が発生しました。

「……痛い」 慣れない冬靴の中で、左足の小指が圧迫され始めていました。 さらに、寒さ対策で履いてきた**「極厚手のウールソックス」**。この繊維の厚みが普段と違う摩擦を生み、踵(かかと)に独特の靴擦れ感を主張し始めます。 一歩進むたびに走る痛みに耐えながら、慎重に足を運びました。
13:00の決断。ピークハントより大切なこと
順調に歩いていたつもりが、ふとした瞬間に悲劇は起きました。 「あれ、道がない?」 縞枯山と茶臼山の分岐手前で、先行者の踏み跡(トレース)を見失い、誤って新雪のエリアに踏み込んでしまったのです。

ズボッ。 足が膝まで雪に埋まります。アイゼンが雪に絡んで重い。 もがけばもがくほど体力を削られ、前には全く進みません。なんとか元のルートに復帰しましたが、たった数分の出来事で体力とメンタルを一気に消耗してしまいました。
ほうほうの体で分岐に到着。時刻は13:00。 ここでザックを降ろし、惣菜パンをかじりながら、温かいお湯を一口飲みました。 喉を通る熱さを感じた時、ハッとしました。 「そういえば今日、ここまで水分を摂っていなかった」

冷静に状況を整理します。
- 現在時刻: 13:00。登山終了目標は15:00。
- 選択肢A(進む): ここから直登して反対側へ下る。ルートは未知。急斜面を下れる保証はない。
- 選択肢B(戻る): 今来た道を戻る。時間は同じ。ルートは既知で確実。
夏山なら「あとちょっとだし」となる場面かもしれません。 しかし、ここは冬山。足の小指は痛い。体力も削られています。 「今日の目的は、雪山を楽しむこと。何がなんでもピークを踏むことじゃない」
そう自分に言い聞かせ、私は**「撤退」**を選びました。 初めてのピークハントは断念。しかし、この判断こそが、今後長く山を楽しむための第一歩だったのだと思います。
山が低く鳴く。美しき撤退戦
「戻る」と決めて、来た道を引き返します。 天気は良いものの、先ほどより風が強くなり、山全体が低く唸るように鳴いていました。

ふと振り返り、目指していた山頂の方を見ます。 そこにあるのは「威厳」と「不安」。 しかし、進行方向に目を向けると、そこには美しい山々の風景が広がっていました。

「ああ、綺麗だ」 撤退を選んだことで、心に余裕が生まれ、純粋に雪山を楽しむ心が戻ってきました。 間違ってなかった。この選択でよかった。 そう噛み締めながら一歩ずつ踏みしめる雪の感触は、行きよりもずっと優しく感じられました。
地吹雪の洗礼と、心拍数の管理
14:00、ロープウェイ駅周辺まで戻り、友人が待つ「北横岳ヒュッテ」を目指します。 ここから風が一層強くなり、足元の雪が舞い上がる「地吹雪」の中を進むことになりました。
ここで、今回の新装備ゴーグルを初装着。 装着した瞬間、サングラスと変わらぬクリアな視界と、外界から遮られる圧倒的な安心感に包まれました。 「いい装備だな」と試運転も上々です。
しかし、美しい坪庭を抜けると、かなりの斜度がある直登ルートが現れました。

慣れない冬靴の重さと硬さで、小指と踵は限界寸前。 ドクン、ドクン、ドクン。 急な斜度で心拍数が一気に跳ね上がります。これ運動量を増やすと「バースト」する。
鼓動が早くなったら立ち止まり、呼吸を整え、また進む。 今はまだ力任せに上がっているだけ。 「一定の速度で、バーストさせないように登る」 これが今後の課題だと、痛みの中で学びました。

深雪の回廊を抜け、天狗様と再会
分岐を曲がり、ラストスパートに入った瞬間、景色が一変しました。 積雪の量が明らかに段違いになります。

木々は雪を重そうに被り、あたりは真っ白な回廊。 思わず感嘆のため息が出ます。素晴らしい景色の中に、今、自分がいる。 疲れた体も、痛む足も、引きずりながら進みます。
そして、森が開けた先に黒い木造の建物が見えました。 本日の宿、「北横岳ヒュッテ」に到着です。 玄関前で迎えてくれたのは、ユニークな「天狗」。

「足利アルプスでもお会いしましたね。お久しぶりです」 妙な親近感を覚えながら、アイゼンを外します。 時間は15:05。 安全にやりきったことに、静かな達成感を覚えました。
まさかの「貸切」と、化け物級の友人たち
重い扉を開けると、暖房の効いた土間。 ホッと一息ついていると、小屋番さんから衝撃の一言が。 「今日の泊まりは、お客さんたちだけだよ」
なんと、平日の雪山ということもあり、まさかの貸切状態。 案内された部屋に入ると、そこにはストーブがあり、到着に合わせて暖められていました。 冷え切った体をストレッチでほぐし、濡れた装備を干せる幸せ。トイレにもストーブ、水も使い放題(ご厚意)。 「神対応」すぎる環境に感動しました。
15:30頃、友人たちが到着。 話を聞いて驚愕しました。彼らはロープウェイを使わず下から歩き、さらにあの**「縞枯山」を直登ルートで攻略**してここまで来たというのです。 私と同じ時期に雪山を始めたはずなのに、この身体スペックの違いは何だ(笑)。
重量3kgを担いだ「登山仲間(化け物)」との宴
夜は食堂をお借りして(ここもストーブ完備!)、持ち寄り食材での自炊宴会。 ここで、猛者の一人がニヤリと笑いながらザックから取り出したものに、我が目を疑いました。
- 日本酒 500mlパック
- 大量の鍋の具材
- デザート用の切り餅&おしるこ
- 網(餅焼き用)
その重量、食材だけで約3kg。 彼はこれを担いで、ロープウェイを使わず、あの急登を直登して上がってきたのです。 「化け物かよ」


最高の小屋で、最高の仲間と、焼き立ての餅入りおしるこ。 窓の外は極寒の雪山ですが、ここには最高の「暖」と「団欒」がありました。 私の初めての雪山1日目は、これ以上ない幸福感の中で幕を閉じました。
【Day2】極寒の朝。エビの尻尾と山頂アタック
2日目。朝5時に起床。 前日は20時には就寝し、一度も起きることなく9時間熟睡。 食堂に行くと、すでにストーブが焚かれている。小屋番さん、本当に神様です。
朝食を済ませ、荷物をデポしていざ山頂アタックへ。 外に出た瞬間、身震いしました。 昨日より数段、世界が白く染まっています。 予報通りの曇り空、そして身体を煽るほどの強風。
ふと見ると、標識には風が育てた氷の芸術**「エビの尻尾」**がびっしり。

凍てつく南峰を経て、最高地点の北峰へ。


展望はなくとも、この厳しい環境の中、自分の足で一番高いところまで来られた。 昨日の「撤退」があったからこそ、今日の「登頂」がより味わい深く感じられます。
手元を見ると、グローブの繊維一本一本が凍りついていました。 マイナスの世界を可視化したようなその光景に、逆にテンションが上がります。

その後、真っ白な平原と化した「七つ池」で少し遊び、雪を溶かして水を作る実験(詳細は別記事!)をしてヒュッテに戻りました。


下山。「経験値」のために歩くことを選ぶ
小屋で荷物を回収し、いよいよ下山します。 昨日の反省から「いつもの厚手ソックス」に変えましたが、ダメージは回復しておらず普通に痛い。 庇って歩いたせいか、今度は反対の足まで痛み出す始末です。
坪庭の入り口まで戻ると、あの彼が待っていました。 昨日愛嬌を振りまいていたキツツキが、全身氷漬けになっています。

「一晩でこれかよ」と別れを告げ、最後の選択。 ロープウェイか、徒歩か。 猛者たちの辞書にロープウェイの文字はありません。 そして私も、**「雪道を安全に下る歩行訓練の経験値が欲しい」**と、痛む足を引きずりながら歩いて下ることを決断しました。
下山中の覚醒。「小股のリズム」
下山中、天候が回復し、ご褒美のような晴天になりました。 霧氷が輝く美しい森の中、痛みはあるものの、心は晴れやかです。



途中のちょっとした登り返しで、あることに気づきました。 「力を入れてグイッと登るより、歩幅を小さくして、足を早く引き出した方が楽だ」
大股パワー系よりも、小股リズム系。 テンポを身体に染み込ませるため、友人たちを待たせて、わざわざ道を少し戻って反復練習をしました。 確かな手応え。ただ歩くだけじゃなく、自分の身体の使い方を試行錯誤する。 これが「登山」なんだと実感した瞬間でした。
解放と救済。3段そばの衝撃
山麓駅に到着。 ここで、コインロッカーに預けていたスニーカーに履き替えます。 足が解放され、痛みが抜けていくあの感覚。 「靴を持ってきてよかった」。今回のMVPはこの判断かもしれません。
下山後は「ちのステーションホテル」へ。 500円という破格で立ち寄り湯を借り、湯船で生き返ります。
そして旅の締めくくりは、ホテル隣の蕎麦屋へ。 出てきたのは、3段になった信州そば。しかも3つの異なるつけだれで頂くスタイルです。

一口食べた瞬間、風味がいつも食べているものとは段違いでした。 すごいご馳走です。
痛みも、寒さも、撤退の悔しさも、全てはこの一杯のためにあったのかもしれません。 こうして、私の初めての雪山挑戦は、最高の味と共に幕を閉じました。
雪山デビュー戦を終えて

私が初めて踏んだ雪山のピークは、北横岳になりました。
振り返ってみれば、本当に「学びしかない山行」でした。 時間の読み甘さ、ソックスの選択ミス、トレースを見失う焦り……。 小さな判断ミスの積み重ねや、一歩間違えれば怪我に繋がるリスクもあり、想定していた何倍も大変だったのが正直なところです。
けれど、それ以上に雪山は魅力的でした。 美しさも厳しさも含め、夏山の何倍もの経験値を登り手に求めてきます。 その試練を乗り越える感覚が、たまらなく楽しいのです。
まだ、やっと一座。 これからあらゆる山に登って、少しずつ、でも着実に経験値を貯めていきます。
「よし、来週も雪山に行こう」
痛む足をさすりながら、帰りの電車ですぐにスマホを取り出し、次の予定を考えている自分がいました。 10年後のエベレストへ。私の挑戦はまだ始まったばかりです。


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