【レビュー】テント泊初心者が「ミステリーランチ レイディックス57」を選んだ理由。47Lと迷って出した「正解」の話

登山

テント泊を始めようと決意した理由はシンプルです。

「今年の夏、テントを背負って槍ヶ岳に登りたい」

その一心でした。

憧れの北アルプス・槍ヶ岳。小屋泊もいいですが、やはり自分の力で衣食住を担ぎ上げ、あの尖った穂先を見上げながら眠りたい。

そのためには、今の装備では足りません。家財道具一式を詰め込める、大型のザックが必要でした。

目標は夏の「槍」。神田で探した質実剛健な相棒

ザック選びで心に決めていた条件があります。それは**「質実剛健」**であること。

昨今の登山界隈は「UL(ウルトラライト)」ブームですよね。荷物を極限まで軽くし、ペラペラの生地で作られたザックが溢れています。

ですが、私はその流行には乗らないと決めていました。

テント泊初心者の私には、道具を軽量化するスキルもなければ、華奢なザックで長時間歩き通す強靭な体幹もありません。

「道具に軽さを求めるのではない。道具が私の体力をカバーしてくれるもの」

疲れた時こそ、ガッシリとしたフレームで体を支えてくれる。そんな頼りがいのある相棒が欲しかったのです。

そしてもう一つ、譲れないこだわりがありました。

「色は、白」

泥や岩肌で汚れるのは百も承知です。いや、だからこそ、過酷な山岳風景の中で一際目立つ「白」を背負いたかったんです。

私は登山の聖地・神田へ降り立ちました。

スポーツ用品店がひしめく街を、何店舗もハシゴし、何個ものザックを背負い続けました。

黒、グレー、カーキ……機能的なザックは山ほどあります。ですが、「これだ」という運命の出会いがなかなかありません。

歩き疲れて入った店で、ふと目に飛び込んできたのがMystery Ranch(ミステリーランチ)の「レイディックス57」でした。

軍隊にも採用される堅牢なブランドが出した、異色の「白」。

背負った瞬間、確信しました。

「全ての条件にハマった」

これが、私のテント泊の相棒との出会いでした。

47Lか、57Lか。数万円の投資で失敗は許されません

「レイディックス」を買うことは決めました。しかし、最後の最後で巨大な壁が立ちはだかったのです。

**「サイズ選び」**です。

ラインナップには「47L」と「57L」があります。

正直、見た目のスマートさは「47L」の圧勝です。シュッとしていて、いかにも「歩けるハイカー」という雰囲気が漂っています。

ショップの店員さんも、私の体格と想定している装備を聞いてこう言いました。

「最近のテントや寝袋は小さいですから、47Lで十分足りますよ。大は小を兼ねると言いますが、ザックに関しては『大は無駄』です」

プロの太鼓判です。

心が揺らぎました。47Lにして、荷物を削ぎ落としたスタイリッシュな登山をする自分……悪くないな、と。

しかし、私の頭の中では、別の声が響いていました。

「本当に足りるのか?」

テント、寝袋、マット、着替え、食料、水、そして万が一のファーストエイドキット。

机上の計算では入るかもしれません。ですが、疲労困憊の撤収時、丁寧に畳まないと入らないようなギリギリの容量で、私は冷静でいられるでしょうか?

値段は約45,000円。

「やっぱり小さすぎたから買い直そう」なんて簡単に言える金額ではありません。一度買えば、数年は付き合うことになります。

その場では決断できず、私は一度店を出ました。

自宅に戻り、脳内で何度もパッキングをシミュレーションしました。

「47Lのギリギリの美学」か、「57Lの圧倒的安心感」か。

悩み抜いた末、私が選んだのは**「57L」**でした。

理由は一つ。古臭い言葉かもしれませんが、私の登山スタイルにはこの言葉が真理だと思ったからです。

「大は小を兼ねる」

初心者の私が、ギリギリを攻めてどうするんだ、と。

余裕を持ってパッキングし、余ったスペースには「安心」を詰め込めばいい。

そう腹を括って、私は57Lの購入ボタンを押しました。

初心者は「引き算」なんてできない。「足し算」で恐怖心を飼い慣らす。

57Lを選んだ私の判断は、結果として**「大正解」**でした。

いや、もし47Lを選んでいたら、私のテント泊デビューは失敗に終わっていたかもしれません。

私がテント泊を始めたのは春先のこと。

下界は暖かくても、山の天気予報を見れば、最低気温はいつも一桁台です。

「山の上で凍えたらどうしよう……」

寒さへの恐怖は、経験の浅い初心者を容赦なく襲います。

不安を打ち消す方法はただ一つ、**「装備を足すこと」**です。

予備のダウンをもう一枚。厚手の靴下をもう一足。もしものためのカイロ。

不安の数だけ荷物は増えていきます。

ですが、レイディックス57は、そんな私の不安を全て受け止めてくれました。

防寒着を足しても、着替えを無造作に放り込んでも、ガバッと開いた大きな口で、私の「心配」ごと飲み込んでくれるんです。

季節が巡り、夏になってもそれは変わりませんでした。

憧れの北アルプス、3,000m級の稜線。

真夏とはいえ、夜になれば空気は氷のように冷え込みます。

やはり私は、荷物を減らすことなんてできませんでした。

「初心者は、引き算なんてできない」

ベテランハイカーは「いらないものを削る」と言いますが、何がいらないのかすら分からないのが初心者です。

だから私は、「足し算」で恐怖心を飼い慣らしました。

重くなることは覚悟の上。その代わり、寒さやひもじさに震える夜は過ごさない。

パンパンに膨らんだ白いレイディックス57。

その重みは、私が安心して山に挑むための「保険」の重さでした。

この相棒が全てを背負ってくれたおかげで、私は恐怖に打ち勝ち、念願の槍ヶ岳の頂に立つことができたのです。

テント泊の夜、この「横開きジッパー」に救われました

容量だけではありません。実際に山で使ってみて初めて気づいた**「神機能」**があります。

カタログスペックにはあまり大きく書かれていませんが、これこそがレイディックスの真骨頂かもしれません。

**「斜めに走る、横開きジッパー」**です。

テント泊をしたことがある人なら分かると思います。テントの中って本当に狭いですよね。

シュラフを敷けば、ザックを立てて置くスペースなどありません。ザックは足元や枕元に「横倒し」にして置くことになります。

普通のザック(上からしか開かないタイプ)だと、これが地獄なんです。

底に入れたダウンジャケットや着替えを取り出すために、上の荷物を全部引っ張り出さなければなりません。狭いテント内はカオスになります。

ですが、レイディックスは違います。

ザックを横に寝かせたまま、ジッパーを走らせれば、まるで旅行カバンのようにガバッと開き、中身のどこへでもアクセスできるんです。

寝袋に入ったまま、手探りで底の荷物をスッと取り出せた時の感動といったら……。

「ああ、こいつは現場のことを分かってる」と唸らされました。

さらに、この機能には思わぬ副産物がありました。

**「結露ガード」**です。

山の朝、テントの内壁は結露でびしょ濡れになります。

普通のスタッフバッグ(着替え袋)をテントの隅に直置きすると、結露を吸って濡れてしまいます。

しかし、レイディックスの中に荷物を入れたままにしておけば、丈夫な生地が結露を弾いてくれるんです。

「ザック自体が巨大なドライバッグになる」

この機能があるだけで、防水スタッフバッグを何個も持ち歩く必要がなくなります。

結果的に、荷物の軽量化にも繋がっているんですよね。

まとめ:汚れこそが勲章

購入時は真っ白だった私のレイディックスも、今では土や草で薄汚れてきました。

ですが、その汚れを見るたびに思うんです。

「いい味が出てきたな」と。

それは、私と共にアルプスの稜線を歩き、テント場で夜を明かした証ですから。

もしあなたが、初めてのテント泊ザック選びで迷っているなら。

そして、サイズで悩んでいるなら。

私は迷わず**「57L」**をお勧めします。

初心者のうちは、荷物を減らすことよりも、不安を飲み込んでくれる「余裕」を手に入れるべきです。

この白い相棒となら、どんなに荷物が重くても、きっと笑って頂上を目指せるはずです。

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