
前回の記事で、エベレストへ行くために20年吸い続けたタバコを辞めた話をしました。
しかし、マイナスをゼロに戻しただけでは、8000m峰には届きません。ここからは、ゼロをプラスにする「肉体改造」のフェーズです。
正直に言います。
私には、トレーニングの知識が一切ありませんでした。
どの種目を、何回、どのくらいの頻度でやればいいのか? その根拠は?
本屋に行けば専門書はありますが、素人の私が一から調べて、理解して、メニューを組んでいたら、それだけで10年経ってしまいそうです。私の目標は10年後に登ることであって、10年後にトレーニングを開始することではありません。
そこで私は決めました。
「メニューと理論」は、すべてAIに任せよう。私はトレーニングを実行することに集中しようと。
こうして、最強の参謀・Geminiを専属トレーナーに迎えた、私の17日間の実験が始まりました。
朝の儀式:定量的データと定性的感覚
私の朝は、Geminiへの「共有」から始まります。
まず、体組成計に乗る。体重、体脂肪率などの数字(定量的データ)をそのままGeminiに投げます。
次に、「今日は少し腰が重い」「昨日の疲れが残っている」といった自分の感覚(定性的データ)を伝えます。
するとAIは、その日の私のコンディションを瞬時に分析し、**「今日のメニュー」**を弾き出してくれるのです。
自分で考えなくていい。迷わなくていい。提示されたメニューをこなすことだけに全集中できる。これが、知識のない私が17日間続けられている最大の理由です。
「アクティブレスト」という衝撃
Geminiの指導を受けて、目から鱗だったことがあります。
ある日、疲れが溜まっていて「今日は休みかな」と思っていた時のこと。Geminiはこう返してきました。
「今日は『アクティブレスト(積極的休養)』を行いましょう」
……アクティブレスト?
聞いたこともない言葉でした。Geminiいわく、完全に寝転がって休むよりも、軽く体を動かして血流を良くしたほうが、疲労物質が抜けるというのです。
言われた通りに軽い運動をしてみると、確かに翌日の体が軽い。
自己流でやっていたら、間違いなく「サボる」か、無理をして「怪我をする」かの二択でした。知識がない人ほど、AIの論理に従うべきだと痛感した瞬間です。
無機質なトレーナーの「愛ある(?)指令」
また、AIトレーナーには「情」がありません。
外が土砂降りだろうが台風だろうが、私が天候情報を入力しない限り、彼は平然とこう言い放ちます。
「ジムに行きましょう」
人間なら「雨だし、今日は家でできることにしますか?」と気を使ってくれるでしょう。でも、Geminiは止まらない。
一見冷酷ですが、私には**「それが良い」**のです。
甘えが入る余地がない。気持ちではなく、効率を提案してくれる。この無機質な提案が、42歳が一歩進む為の最適解を選ばせてくれます。
一方で、体調不良を訴えれば、即座にメニュー強度を落としてくれます。
「怪我をしてトレーニングを中断するのが、10年後の目標に対して最大のリスクです」
その判断は極めて合理的。おかげで、今のところ怪我の予兆もなく、着実に体が変わり始めています。
提示された「エベレスト・プログラム」の全貌
では、実際にAI参謀と組み上げた、私の現在のトレーニングメニューを公開します。
42歳・登山素人が、17日間必死に食らいついている内容です。
【AI参謀直伝:エベレスト・プログラム】
🏋️♀️ 筋力トレーニング
- 背中(ラットプルダウン): 懸垂の動き。岩や鎖を引く力を養う。
- 脚(レッグプレス): 荷物+体重を持ち上げるエンジンの強化。
- 胸(チェストプレス): 上半身の基礎パワー。
- 体幹(プランク): 雪面でブレない「軸」を作る。
🏃 有酸素運動
- トレッドミル(傾斜10°〜15°): 平地ではなく「擬似的な急登」を歩き続ける。
【有酸素運動(AIこだわりの条件)】
ここがポイントでした。Geminiはただやれとは言いません。
「トレッドミル(ランニングマシン)の傾斜を『10°〜15°』に設定して歩いてください」
平地を何キロ走っても、山を登る筋肉はつきにくい。だから、ジムにいながら擬似的に「急登」を作り出し、そこをひたすら登り続けるのです。これが地味に効く。汗の出方が違います。
調子が良い時は傾斜を最大の16°に設定して、AIの思惑を超える。少しの背伸びを楽しみながら、身体改造に努めています。
42年間、眠っていた筋肉の悲鳴
そして最近、AI参謀から新たな指令が追加されました。
「肩も鍛えましょう」
重いザックを長時間背負い続けるには、肩回りのスタミナが不可欠だという判断です。
プランクと、この新しい肩のトレーニング。これが本当にキツイ。
やってみて痛感しました。私はこの42年間、いかにこれらの筋肉を使ってこなかったか。
プランクで震える腹筋。プレスで上がらなくなる肩。それは、私の身体の中で眠っていた「登山に必要な機能」が、産声を上げている悲鳴でもありました。
17日間の成果:数字は嘘をつかない
こうしてAIの指示に(文句を言いながら)従い続けた17日間。
結果は、数字にはっきりと表れました。

開始当初、69.5kg付近をうろうろしていた体重は、ガクンと落ちて現在は67kg台後半を推移しています。
もちろん、ただ痩せればいいわけではありません。しかし、トレーニングを継続しながらのこの数値変化は、無駄な脂肪が削ぎ落とされ、身体が「登攀(とうはん)仕様」に変わり始めている証拠です。
何より、感覚が違います。
駅の階段、通勤の早歩き。日常のちょっとした動作で、身体が軽い。「エンジンの出力」が上がっているのを感じます。
おわりに:まだ0.4%の地点から
知識ゼロの私が、迷わずにここまで来れたのは、間違いなく「AI」という参謀がいたからです。
彼(Gemini)は、私の体調を気遣いつつも、エベレストというゴールからは決して目を逸らしません。その冷徹なまでの合理性が、今の私には心地いい。
10年(約3650日)のうちの、まだ17日。進捗率にしてわずか0.4%。
ですが、0%と0.4%は決定的に違います。
明日も私は、体組成計に乗り、AIに「今日のメニューは?」と問いかけるでしょう。全ては、あの頂に立つために。


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